ご相談はSSSCへ!!

By.ASURA

 2001年の5月〜6月頃に書いたモノです。特に山も意味もないです(笑)
 なんとなくSSSCと広告、そしてキリーを考えたら出来てしまいました。


 1920年代のイギリスの首都ロンドン。
 古ぼけた町並みの一角に、真新しい「SSSC」と書かれた看板を掲げたビルディングが建っている。
 警備会社として店舗を構えているこの会社は、この界隈では有名であった。例えば町内での一斉掃除の際には、この会社のアルバイトが作った怪しげな機械が大活躍し、溝のゴミと一緒に脇の道を1メートルほど跡形もなく消滅させたとか、また町内を騒がせた泥棒を捕まえてもらう際には、ある屋敷に忍び込もうとした泥棒と大立ち回りを繰り広げ、屋敷を半壊させつつお縄をちょうだいしたとか…。そういった有名さであった。
 しかし、SSSCにはもう一つの顔がある。闇で暗躍するモノ達や、ある一部のカルト達のみが知るもう一つの顔…、心霊調査のエキスパートという顔である。
 真夜中に徘徊する異形のモノ…、誰もいないはずなのに物音がする屋敷…、そして身に降りかかる不可思議な現象の数々…。これらを調査・解決するエキスパート。そう彼らこそが“ゴーストハンター”と呼ばれる者達であり、SSSCこそがゴーストハンターが集まる心霊調査機関なのである。
 今日も怪奇現象に悩まされる者達がSSSCの門をたたき、カモにされていく…。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ふう、こんなものでどうでしょうかねぇ?」
「…いいんじゃないですかぁ?」

 SSSCのオフィスにある窓際の席、真新しいがよく使い込んであるタイプライターの前で、珍しく昼前からキリーが作業をしていた。そして横では電話番といいつつ、自作のレコーダー付き電話機に電話番を任せて、ユリがキリーの作業を見守っている。キリーの作業を見ていたユリは、自分が思った疑問をぶつけてみた。

「ところで、キリーさん。何を書いているんですか?」
「これですか? これはSSSCのビラを書いていたのですよ。シャルロットさんが社長に頼まれていたようなのでね」

 ユリの疑問にキリーは端的に答えてくれる。しかし、何かがおかしい。やはり納得のいかないユリは改めてキリーに疑問をぶつけてみる。

「ふ〜ん。でも、なんでキリーさんが書いてるんですかぁ?」
「いやいや、こんなおもしろそうなこと、彼女に任せるわけにはいきませんよ。どうです? なかなかの内容でしょう?」

 キリーの答えに対するリアクションは、彼らの後ろから聞こえてきた。

「へぇ〜、いつからキリーはシャルロットの仕事までやるようになったのかしら?」

 にこやかな声。しかし、キリーにとっては地獄からの悪魔の囁きに聞こえてくる。それでも持ち前の鋼鉄の神経を武器にして、顔色を変えることなく後ろを振り返る。

「やあ、明日香社長。いつも変わらない美しさですね。ところで、いつからそこにいらっしゃったのですか?」
「割と最初からね。シャルロットが使っているタイプライターがなくなったって言うから、探していたところなのよ」
「ほお、それは災難でしたねぇ」
「そう、災難だったのよ。しかも書きかけの書類が入ったままらしいのよね」
「またまた、それは災難なことで。心中お察し申します」

 SSSCには、市販されているタイプライターは現在一台しかない。シャルロットが契約書やその他重要な書類を書くために使用しているものだ。そしてキリーの目の前には、市販されているタイプライターが置いてある。そこまで分かっていて、キリーと明日香は会話を続けているのだ。ユリはキリーの、地雷原でタップダンスを踊るかのような会話に恐れをなして、早々と地下の自室兼研究室へ退散している。常人ならばそうするだろう。しかし常人ではないキリーは、さらにダンスのテンポをあげていく。

「それよりも、見て下さいよ。シャルロットさんの代わりに、SSSCのビラを書いておきましたよ。どうです? 最高の出来映えでしょう?」

 文書を一目見た明日香は、肩を振るわせながらも平静を保った声でキリーに問いただす。

「…キリー? うちが何の会社か知ってるのかしら?」

 明日香が我慢強く問いただした言葉に、キリーはさらに明日香の忍耐力を試すかの如く応える。

「え? そりゃ〜怪しげな怪奇現象を解決するため、日夜活躍する怪しげなヤクザ会社…」

 さすがの明日香の忍耐力もここまでだった。堪忍袋の緒が切れ、一オクターブあがった声で間違いを訂正する。

「んなわけあるかー!! うちは“まっとう”な警備会社!! こんなビラ書いて客が来ると思ってるの!! それにビラ書きはシャルロットの仕事でしょうが!!」

 明日香の剣幕にやはり顔色を変えず、キリーは地雷のスイッチを勢いよく踏み抜いた。

「いやいや、真実の一端を書いたまでですよ。シャルロットさんは優しい方ですから、真実は書けませんよ。だって社長からして凶暴だなんて…」

 キリーが禁句を口にした直後、SSSC社内唯一のタイプライターはキリーの顔面で大破することとなった。そしてその後、シャルロットは泣く泣く新しいタイプライターを購入して一からビラを書き直す事となり、タイプライターの代金がキリーの少ない給与から差し引かれることとなる。
 ちなみに明日香が本当に凶暴なのかどうかは、黙して語らない方がよいだろう…。